Q&A 電車の遅延で遅刻をしたら給与はどうなる?

2021.03.19 (金)

Q:電車の遅延で始業時間に遅れてしまいました。
遅延証明書を会社に提出しましたが、給与から遅刻分が引かれていました。
電車の遅延で遅刻した場合、会社は労働者の給与から遅刻分を引いても良いのでしょうか?

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A:法的には問題ありません。
ただし、会社が労働者の給与から遅刻分を引くか引かないかは、その会社のルールによります。
===

 

電車で通勤している方は、人身事故や自然災害等のトラブルによる電車の遅延で、始業時間に間に合わなかった経験も多いでしょう。遅延証明書を会社に提出すれば、遅刻扱いにはならないのではないかと思いますよね。
この事例では、民法第624条の条文を抑えることがポイントとなります。

 

民法第624条 ~ノーワークノーペイの原則について~
「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。」

 

「ノーワークノーペイの原則」とは、文字通り「働いていなければ賃金もない」という意味の原則になります。
つまり、会社は労働者が働いていない(遅刻して働けなかった)時間に対して、賃金を支払う義務はなく、法律違反にはなりません。
また、ノーワークノーペイの原則が適用される場合、されない場合には以下のようなものがあります。

適用される場合 遅刻、早退、欠勤、産前産後休業、育児休業、介護休業等
適用されない場合 年次有給休暇、会社都合による休業、会社都合による自宅待機(懲戒処分の出勤停止は除く)等

体調不良や私用による欠勤又は早退のように「労働者に原因がある」場合、ノーワークノーペイの原則が適用されることは分かるかと思いますが、事故や自然災害などによる遅刻又は早退のように「労働者にも会社にも原因がない」場合、ノーワークノーペイの原則が適用されるか迷うところでしょう。ポイントは「労働者に原因がある」かどうかではなく、「会社に原因がない」ため、ノーワークノーペイの原則が適用され、会社は労働者に対して賃金を支払う義務はないという考えとなります。
一方で、経営不振により工場等が停止することで、労働者が出勤できないような「会社に原因がある」場合は、ノーワークノーペイの原則は適用されず、会社は労働者に対して賃金を支払う義務が発生します。
会社都合で休業させる場合、会社は労働者に休業手当を支払わなければなりません。

 

労働基準法第26条 ~休業手当の支払について~
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
※休業手当の計算方法は別の機会でご説明致します。

 

ノーワークノーペイの原則は、会社が労働者に賃金を支払う義務について定められたものですが、実際に会社が電車の遅延による遅刻分を労働者の給与から引くか引かないかは、会社のルールによって変わります。
遅刻扱いにしない場合、会社は就業規則に「電車の遅延による遅刻は、遅延証明書があれば遅刻扱いにしない」などの内容を記載するのが一般的です。このような内容の記載があれば、会社は労働者に対して、遅刻して働けなかった分も給与を支払わなければなりません。

 

以上のことから、会社が電車の遅延による遅刻分を労働者の給与から引くか引かないかは、法的には問題ありませんが、会社のルールによるということになります。

 

埼玉県さいたま市浦和区の社会保険労務士法人フォレストは、給与に関する情報を随時発信してまいります。

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